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凍りつく

僕がガイドを専業としてそろそろ40年になる。

その間、夏山登山はトレッキングと名を変え、おまけに近年のキャンプブームだ。

山スキーはバックカントリーとこちらも名を変え、スノーボードまで参戦して、さらにここ10年ほどは海外からスキーヤーまで加わって大ブレークだ。

今年はコロナで調子悪いけど・・・・。

 

そしてこの40年間、不滅の不人気がアイスクライミングではなかろうか…?

昔からごく少数のマニアは存在していて、その一部の変態さんたちには熱狂的な支持を受けるのだが、どうにもブームとまでは至らない。

 

なぜ…?

寒いし、手足冷たいし、道具は高いし、そして何よりも危ない!

上から氷の塊は落ちてくるし、フォローで登っていても難度の高いところでは

命の危険を感じる事だろう。

夏の岩登りはスポーツクライミングと名を変え、もはや安全なスポーツとして確立してオリンピック種目にまでなっている。こちらは落っこちてもまず、命を落とすことはない。

アイスクライミングのガイドは命がけだ。

夏の岩場のようにあらかじめプロテクションがあるわけではなく、ガイドがリードしながら不安定な体制でアイススクリューを決めていかなければならないし、ちょっとランナウトしてフォールしようものなら、簡単に足首骨折だ。

今年は北極からの寒気が次々に日本列島を通過、35年ぶりの寒い冬となった。

また、去年の秋ごろに発表された長期予報通り

ラニーニャの影響で大雪にも見舞われ、ウインタースポーツは大盛り上がりと行きたいところだが

アイスクライミングだけは孤立独歩路線を進行中。

そんな訳で割に合わないアイスクライミングの仕事なのだが、僕にとってはこれが一番面白仕事なのだ。パウダーは毎日滑っても楽しいのだが

アイスクライミングは毎日はやってられない。

とても身も心も持たないだろう。

そのうち惰性になると危険な目に遭うだろうし、命を落とす事になるだろう。

 

そんなアイスクライミングをなぜ…?

ひとつも間違えてはいけない、このヒリつく感じは、なかなか他では味わえないのでね。

 

ウケない冗談を言うと寒いとか、その場が凍ったとかいうけど、まさにアイスクライミングガイドはその最たるもんだろうなぁ。

 

只今、数少ないお客さんで凍りついてます。